第2・3回 リサーチデザイン
関西大学総合情報学部
2024/10/3 & 2024/10/10
何が真実で、何が真実でないか
何が望ましく、何が望ましくないか
反証可能性 (falsifiability) が存在すること
鈴木光太郎. 2008.『オオカミ少女はいなかった:心理学の神話をめぐる冒険』新曜社
教科書には正しいことだけが書かれていなければならないとは思っていない。むしろ、誤った記述があっても許されると思う(誤りは直せばよい)。科学は誤ることがあたりまえであって、そもそも科学とは、そうした誤りをたえず書き改めてゆく営みだからだ。私が許されないと思うのは、だれかが誤って書いたものをなにも考えずに受け売りしたり、それを孫引きやひ孫引きしたり、果ては先祖がたどれない引き方をしている場合である。あるいは、誤りであることが判明しても、直しもしない場合である。
参照枠組み (frame of reference) の変更
背後にある前提条件を実証する
現実世界よりも抽象度の高い命題の妥当性を検討
Monroe (2000) の「良い研究テーマ」の条件
問いは具体的である同時に、一般化可能性を目指す必要がある
問いは経験的分析によって答えることが出来なければならない
当該テーマに対する理解や知識を高めること
研究の成果が社会に貢献できること
あまりにも常識的な結果が予想される問いは避ける
一般的な常識からかけ離れた事実から出発
一般的な常識からかけ離れた事実から出発
一般的な常識からかけ離れた事実から出発
例
政治学を含む社会科学における論文の構成
落語における「つかみ」に該当
自分のRQに関連する既存の研究を紹介
自分のRQにおける原因と結果の関係/メカニズムを提示
自分のRQにおける原因と結果の関係/メカニズムを提示
自分のRQにおける原因と結果の関係/メカニズムを提示
理論を変数間の関係として説明したもの
同じ理論でも仮説は複数存在し得る
Monroe, Alan. 2000. Essential of Political Research. Westview Press
Garbage in, garbage out
原因と結果の関係についての一般的な記述
今はやや古い議論
例1 | 例2 | |
---|---|---|
\(X\) | 朝食 | アクション映画の視聴時間 |
\(Y\) | 学力 | 暴力性 |
例1 | 例2 | |
---|---|---|
\(X\) | 朝食 | アクション映画の視聴時間 |
\(Y\) | 学力 | 暴力性 |
\(Z\) | 親の経済力 | 元々の暴力性 |
原因と結果の関係についての一般的な記述
小選挙区制は二大政党制を促す
小選挙区制は二大政党制を促す
仮説が観察・実験などによって反証される可能性
観察可能な含意の多さ \(\propto\) 反証可能性の高さ
正確に記述され、具体的な予測をする
単純な理論ほど (アプリオリに) 高い説明力を持つ (Jeffreys 1961)
例1)AかつBかつCの条件下で、XはYをもたらす
例2)Aの条件下で、XはYをもたらす
後者の方がより単純であり、観察可能な含意も多い = 反証されやすい
社会を対象にする社会科学において単純化できるケースは稀という意見も (King, Keohane, and Verba 2021)
それでも極端に単純化しないなら、単純な理論の方が良い
理論から引き出された特定の変数間の関係に関する記述
理論:学歴が高いほど政治参加が高まる(= 高学歴は政治参加を促す)。
仮説内の変数は理論においてそれぞれの役割を有する
どのレベルに注目するか
収入が高いと投票率が上がる?
分析単位 | 説明変数 | 応答変数 |
---|---|---|
有権者 | 個々人の年収 | 投票有無 |
市区町村 | 各市区町村の平均所得 | 各市区町村の投票率 |
選挙区(衆) | 各選挙区の平均所得 | 各選挙区の衆院選投票率 |
選挙区(参) | 各都道府県の平均所得 | 各都道府県の参院選投票率 |
国 | 各国の一人あたりGDP | 各国の国政選挙の投票率 |
ID | 年齢 | 学齢 | 投票参加 |
---|---|---|---|
1 | 68 | 高卒 | 0 |
2 | 51 | 大卒 | 1 |
3 | 71 | 高卒 | 1 |
4 | 36 | 高卒 | 1 |
5 | 34 | 大卒 | 1 |
6 | 37 | 中卒 | 1 |
7 | 72 | 大卒 | 1 |
8 | 50 | 高卒 | 0 |
9 | 27 | 高卒 | 0 |
10 | 24 | 高卒 | 0 |
ID | 都道府県 | 維新の得票率 | 財政力指数 | 高齢者比率 |
---|---|---|---|---|
1 | 北海道 | 7.42 | 0.435 | 29.2 |
2 | 青森県 | 5.42 | 0.341 | 30.2 |
3 | 岩手県 | 5.75 | 0.352 | 30.5 |
4 | 宮城県 | 10.24 | 0.614 | 25.9 |
5 | 秋田県 | 11.04 | 0.309 | 33.9 |
6 | 山形県 | 8.39 | 0.351 | 30.9 |
7 | 福島県 | 7.88 | 0.533 | 28.8 |
8 | 茨城県 | 13.23 | 0.637 | 27.1 |
9 | 栃木県 | 12.78 | 0.640 | 26.3 |
10 | 群馬県 | 10.00 | 0.625 | 28.1 |
ID | 年月日 | 株価 | 東京都最高気温 |
---|---|---|---|
1 | 2023/07/07 | 32451 | 34.2 |
2 | 2023/07/10 | 32393 | 36.5 |
3 | 2023/07/11 | 32435 | 34.3 |
4 | 2023/07/12 | 32280 | 37.5 |
5 | 2023/07/13 | 32106 | 30.3 |
6 | 2023/07/14 | 32588 | 30.5 |
7 | 2023/07/18 | 32457 | 37.5 |
8 | 2023/07/19 | 32812 | 33.9 |
9 | 2023/07/20 | 32803 | 32.6 |
10 | 2023/07/21 | 32336 | 31.6 |
ID | 国 | 年 | 人間開発指数 | 一人あたり購買力平価GDP |
---|---|---|---|---|
1 | 日本 | 2020 | 0.923 | 42153 |
2 | 日本 | 2021 | 0.925 | 44739 |
3 | 中国 | 2020 | 0.764 | 17115 |
4 | 中国 | 2021 | 0.768 | 19260 |
5 | 香港 | 2020 | 0.949 | 59411 |
6 | 香港 | 2021 | 0.952 | 66062 |
7 | 韓国 | 2020 | 0.922 | 44750 |
8 | 韓国 | 2021 | 0.925 | 48577 |
9 | モンゴル | 2020 | 0.745 | 12074 |
10 | モンゴル | 2021 | 0.739 | 12530 |
測定可能かつ正確に測定すること
Masahiko Asano and Dennis P. Patterson. 2018. “Smiles, turnout, candidates, and the winning of district seats: Evidence from the 2015 local elections in Japan,” Politics and the Life Sciences, 37 (1): 16–31.
個人に関する推論の際、集計データを不適切に用いること
予習時間と成績の関係(科目レベル)
予習時間と成績の関係(個人レベル)
予習時間と成績の関係(個人レベル + 科目で層化)\(\Rightarrow\) 「科目」が交絡要因